まさに”無惨”以外思いつく言葉が無い。
世の中にはいろいろなカット技法があり、それぞれこだわりを持つ美容師がいる。
こだわりを持つ美容師は素敵だ。
だが時短(時間短縮)が最優先され、美容師が最も大切にする”技術へのこだわり”を捨てる”無惨なカット”も存在している。
無惨なカットは”技術”では無い
カット技法は確かにそれぞれだ。
髪をまっすぐに切るブラントカット
髪を濡らして切るウェットカット
梳きバサミで切るセニングカット
髪用カミソリを使うレザーカット
ハサミを小刻みに動かすスライドカット・ストロークカット
くせ毛のままカットするドライカット
髪をブローやアイロンで伸ばして切るニューヨークドライカット
それぞれのカット技術に長所と短所があるのは事実である。 長所だけのカット技術は見当たらない。
だが、
これは技術に値しないだろうというカットを目の当たりにしているのも残念ながらここ最近散見している。
無惨なカットの結末
美容師のゲストへの想いが噛み合わない場合もある。 それは人対人だからある意味あって当たり前だ。
しかし、
”目の前の人への想いがあって”というのが前提となるのであって、目の前の人への想いが全く無いならそれはただの小手先だけ・その場限りのまやかしとなる。
そんな無惨なカットがこれだ。
<before>
パッと見て、普通にまっすぐに切っただけのように見える。
さらに
毛先にクローズアップしてよく見てみると
あまりしっかりと切った感が無い。
ゲストに話を伺うと
ある新規オープンした美容室に行ったらしい。場所は東京近郊の地方都市。
価格帯はカット¥5000前後。 決して安く無い価格帯である。
写真で見ておわかりの通りこのゲストはセミロングで、当日その美容室には髪をゴムで束ねていったそうだ。
カウンセリング終了後、束ねていた髪ゴムを取る。
束ねている髪ゴムを取ると、このようにゴム跡がくっきりと横に入るものだ。
この状態では正確なイメージを狙ったカットは不可能だということは素人でもサルでも誰にでもわかる。
ちなみに、美容室ではカット前にシャンプーをするかブロー・ストレートアイロンで伸ばすしかこのゴム跡を消す事は出来ない。
しかし、なにを血迷ったのか
その髪ゴムの跡が残ったままの状態で
そのまま横一直線にジョキンッ!!
…
そして、申し訳ない程度に髪の内側を梳いてある。
一発アウト!!
これでは美容師の技術とは到底言えない。
もちろん、髪を切った直後に髪がまとまらなくなったのは言うまでも無い理に適った結果である。
このようなカットでは時間は5分あれば終わってしまうだろう。 5分カット。
10分1000円カット以下…
100歩譲って、激安店ならありえる話であるし実際に見たこともある。
しかし、中堅価格帯以上の美容室がこれをやってしまって大丈夫なのだろうか?
否、そんなわけがなかろう。
時短(時間短縮)に追われ
利益に追われ
その結果このようなカットに結びついたのだと容易に推測できる。
これでは技術を提供する者としては失格である。
無惨なカットからの脱却
横一直線のブロックのようなカットライン。
これをあまり長さを変えずに柔らかいイメージをもって★超繊細★ ドライカットを施していく。
難易度は決して低くは無い。
ブロックの角を丁寧に取っていくようなイメージで、細かく丁寧にカットしていった。
<after>
仕上げはコテでワンカール巻いた。
<before><after>
あの忌々しいブロックのようなカットラインをスッキリと消す事が出来た。
後日談になるが、こちらのゲストから
「巻かなくても寝起きでも変な寝癖がつかずに快適に毎日を過ごしている」
との報告を頂いた。
美容師冥利に尽きる。
…
…
最近、少し痩せたかなぁ…