美容師の葛藤
こうしたいゲストの要望
こうしてあげたい美容師の腕
その間にある現実のギャップ
綺麗にしたい! 現実とのギャップ
本来美容師は
その名の如く美しい容姿を作る職人
だけど、
すべての人を一回の施術で
美しくできるのか?
という答えは必ずしもYESではない。
髪には施術歴がある。
特に薬剤を使用する施術には相性もある。
例えば
カラーで黒染めをした真っ黒な髪に
普通のアルカリカラーをすれば
全く変わらないか
根本の施術歴のない髪型 ばかりが
明るくなってしまいみっともない。
理想は均一に髪全体を明るくしたい。
しかし、
現実はなかなかそうもいかない。
ギャンブル施術としては
黒染め部分の髪に
ハイトーンの薬剤を使い
明るくなるのか?を試す事。
もちろん髪のダメージは避けられない。
ここで、
ゲストの髪を傷めずに明るくしたい
という願望は葬られる。
まず、
髪を傷めずにカラーは
そもそも無理なのだ。
黒染めをするときは
後々の事を考えて慎重になる必要がある。
縮毛矯正をした髪に
パーマでカールをつける事に
抵抗を感じる美容師は多い。
自分もその一人である。
ゲストは縮毛矯正で
真っ直ぐ綺麗になっているところに
パーマをかけたら
素敵なヘアスタイルになるだろう
と思っている。
想像の中では。
しかし、現実は厳しい。
中には運が良く縮毛矯正をかけた髪にも
良いカールがパーマによって
もたらさせる事もあるのだが
おそらくその成功率は20%に満たない。
残りの80%以上は失敗するという事だ。
失敗例の典型パターンは
髪がチリチリになったり
濡れた状態ではテロテロになる
バサバサになる
野球で例えると
ホームランを打つのか?
ヒットを狙うのか?
は打率に大きく影響してくる。
ホームランが出れば狙えば一発逆転だ。
覚悟を決めて、
一発にかけるべき時もあるに違いない。
しかし、
ホームラン狙いでは出塁の確率が下がる。
ピッチャーはヒットよりも
ホームランを恐れる事は言うまでもない。
だからホームラン対策は
しっかりとしてくる。
間違いなく
ヒットをこまめに狙う方が
打率は高くなる。
そう。
塁に出る成功率が上がる。
ヒットを重ねるのか?
一発ホームランを打つのか?
美容師はプロである以上、
基本失敗はしてはならない。
失敗をしないということは
ヒットを重ねていく方が無難
であることは間違いない。
年月をかけてヒットを重ねていき
求める髪を作り上げるのか?
1回や2回でリスクを度外視して
ホームランを狙い
求める髪を作り上げるのか?
どうしてもホームランを
打たなくてはならない場面もある。
その瞬間のゲストの気持ちが
どこにあるのか?
自分とゲスト
両方の腹が決まっているのか?
が判断の基準になっている。
同じ素材が一つとしてない髪には
日々葛藤の連続なのである。